「脂質代謝のタイプ」で自分に合った食事療法


前回お話ししたとおり、脂肪細胞では、高脂血症などで脂肪が増えすぎると、細胞に悪影響を与える悪玉物質が血中に増えるようになります。これによって動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、腎障害、悪性腫瘍、自己免疫疾患などの病気を引き起こすもとになります。

高脂血症はVLDL、IDL、LDLの代謝異常によって、それぞれⅣ型、Ⅲ型、Ⅱ型に分類されます。

 

当クリニックの患者さんのデータによると、この脂肪代謝のタイピングでは脂肪代謝の異常のないかたは被験者全体の29パーセント、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳのいずれかの型が48パーセント、2つ以上の複合型が23パーセントで、脂質代謝の悪い方が71パーセントもいるという結果になっています。

 

Ⅲ、Ⅳ型はアポEというアルツハイマー病に関係するたんぱく質が上がりやすい傾向があります。Ⅲ型は甲状腺関係自己免疫疾患であるバセドウ病や橋本病などの甲状腺の病気や、SLEなどの腎疾患が要注意で、私のクリニックにおけるこの型のおよそ40%が、甲状腺に何らかの疾患異常をもっています。ところが実際に甲状腺の病気をもっている患者さんでも、ご自分に脂質の代謝異常があることを認識している人は多くありません。このような方々のうち食事療法だけで甲状腺の異常が解消される方もいらっしゃいます。

 

脂質代謝のタイピングによって、仮にそのリスクが低いことがわかったとしても、脂質代謝のよくない家系の場合は、美食を好むグルメ志向にならないようにといったことをアドバイスしていきます。

いいかえますと、脂質代謝の悪いタイプは、脂肪をあまり摂取しなくてもいい、家系的に長い歳月を菜食中心で生き残ってきた古い家系ではないかとも考えられます。そうしたタイプには、現代のような飽食の時代にあっても、高脂肪、高カロリーのごちそうを食べすぎないほうがいいですよ、とアドバイスするわけです。

 

その逆に世間にはまれに90歳を過ぎてもステーキが大好きで、脂っこいものを好んで食べてもいっこうに問題がないというタイプの高齢の方もいらっしゃいます。

脂質の代謝は、人によってレベルが違いますから、一般的には、肉食の人の方が癌などになる頻度が多いことは知られてはいますが、特定のある個人にとっては、一概に肉食が「いい・悪い」ということは言えないわけです。

 

本来は、脂質のタイピングをしてみなければ、本当にその人に合った食事療法をアドバイスするのは難しいのですが、実際には、一般的な食事療法では、脂質代謝のタイピングを踏まえることなくおこなわれていますから、片寄ったことにもなりがちです。その意味でも、自分の脂質代謝がどのレベルなのか、その傾向を知ることはとても重要だと思われます。

 

ちなみに私の家系は、まさにこの複合型の脂質代謝のもっともたちの悪いタイプで、親戚には40代から脳梗塞や心筋梗塞などで亡くなったり、がんやパーキンソン病などを患ったりした者もいます。これらは、いずれも脂質代謝と関係の深い疾患です。

 

上記以外にも、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、腎障害、悪性リンパ腫、悪性腫瘍など、現代になってからとくに増えている疾患には、いずれも脂質代謝異常との因果関係が認められています。それだけ人類の進化の過程において、脂質は欠かせないものであったからでしょう。


私たちは、希少なキノコ「ハナビラタケ」から

サイレントエストロゲン」という新しいカテゴリーの

細胞活性を発見しました