1万症例の経験から見えること


私がアメリカ留学から帰国後、大学で遺伝子解析の研究に携わっていたときの患者さんは、主に心臓血管疾患が中心でした。

そうしたなかには、1個の遺伝子の異常だけでなく、30個もの遺伝子に異常が見つかるようなケースもありましたが、同じレベルの遺伝子異常でも、患者さんによって症状の重い方もいれば、普通に日常生活が送れる方もいました。

そうしたことから、病気の発症には環境が大きく左右しているのだということに、こちらもだんだんと目が開かされていきました。

また、そうした患者さんとその家族のかたがたには、脂質代謝異常や糖質代謝異常が極めて多くみられ、これらのケースにおいても、家族ぐるみで食事療法や運動療法をベースに生活習慣を変えていくことで、病気の悪化、さらなる病気の発症を抑えるなど、病気をコントロールできる可能性が充分にあるということが明らかになってきたのです。

 

そうした経験から、健康管理を自分でおこなうために、個々人の体の現状を科学的、統合的に知ることから始める、「統合医科学」という考え方が出てきたのですが、それを具体的に推し進めたのが、いまから13年前、2005年から5年間、文部科学省の戦略的研究拠点育成プログラムとして、東京女子医科大学で行われた「国際統合医科学インスティテュート(IREIIMS)」事業でした。

このプロジェクトは、前にもお話しましたように、これからの医学は細分化された専門領域でおこなう医療ではなくて、基礎医学と臨床医学を統合。サイエンスの視点から人間の「健康から病気に至るまでの、体を総合的に理解する医科学」によって、新しい予防、診断、治療法の開発をめざしたものです。

 

2010年、このプロジェクトをさらに発展させるために、東京女子医科大学医大を退職後、近くに「若松河田クリニック」を開設し、いまも東京女子医大学と連携、協力関係をもちながら、診療にあたっています。

そうして先のIREIIMS事業における5000症例と、現在のクリニックになってからの5000症例とを加えた、およそ1万症例を診てきたことによる経験が、いまの私の診療のベースになっているわけです。

 

いま、私のクリニックには、がんの手術後のケアやセカンド・オピニオンを求めて来院されるケースも少なくないのですが、「ともかく死ぬまでは生きているのだから」を合い言葉にして科学的に納得できること、1パーセントでも治る可能性があると思えるものは何でも試して共に生きていこうというのが、私の考え方です。

ですから、患者さんに対しても、「このような療法がありますが、試してみますか?」といったように、積極的にいろいろな情報を開示しています。

 

実際のところ、私のクリニックでは、食事療法をはじめ、高濃度ビタミンCの点滴、アガリスクやハーブのサプリメント、高品質の野菜、有用微生物群の製品などを取り入れることで、がんの患者さんの腫瘍マーカーが劇的に下がった例もあります。

もちろん、これらの療法は、がんに限らず、リューマチなどの自己免疫疾患、糖尿病や高血圧・高脂血症、アレルギー、乾せん、その他の皮膚病など、およそ「現代病」といわれるさまざまな病気の改善にいい結果を出しています。

 

また、私のクリニックは健康な生活を総合的に応援するNPO法人「イムクルス」と連携していて、同じく「イムクルス」が運営する健康相談センター「GENKI HOUSE Luce」を併設しています。

イタリア語で「光」を意味する「Luce(ルーチェ)」では、「衣食住から見直そう」という考えのもと、衣食住に関連する健康を向上させるもの――たとえば、無添加で、油脂、塩分や糖分に配慮した食品、お茶や調味料類、スーパーフードのハナビラタケ、保温性の高い肌着や藍染めの衣類、洗剤や化粧品、など自然素材や、シックハウス対策の有用微生物を使った資材、温熱療法に用いる健康器具などの数々をご紹介しています。また、玄米や有機野菜を使った健康食レストランのコーナーでは、生活習慣病の予防に役立つ食事をご提供・紹介するだけでなく食生活のアドバイスもおこなっています。


私たちは、希少なキノコ「ハナビラタケ」から

「サイレントエストロゲン」という新しいカテゴリーの

細胞活性を発見しました